ある経営者の方が相談に見えました。「これからは子会社をたくさん作ったほうが成長する、と聞いて10社近くの子会社を作った。しかし気づいたら、いつまでたっても儲からず、親会社との事業シナジーさえない子会社ばかりになってしまった。どうしたらいいのだろう。」
これはよくある話です。経営者が子会社を作る時に大切なことは、その子会社のミッションは何か、明確に意識しかつそれを子会社社長と共有することです。しかしこの方はそれをせず、とにかく子会社をつくれば何とかするだろうと考えてしまったのです。

筆者がかつて勤務した情報システム開発会社でもかつてこんなことがありました。情報システム開発の分野では、これからはコンサルタントが顧客のニーズをつかみ情報システムプランに落とし込むコンサルテイング力が優劣を決める。だから外部からコンサル業界の人を雇って社長に据え新会社を作りました。しかし、子会社社長になった人物は機械設計のコンサルには詳しいものの情報通信分野は不案内でした。結局その社長が手掛けたのは自治体のIT化支援のコンサル業務でした。ところが本体では自治体向けのITサービスはメニューになく今後も取り組む予定はありません。結局このコンサル子会社は赤字続きで本体とのシナジーが望めないため清算されました。

子会社には全体のビジョンの中で役割を与えること、そしてその役割を全うできる人材を  据えることが必要です。これを見事に実現したのは、皆さんよくご存知の徳川300年の基礎を築いた家康です。

子会社を作る時に大切なことは、まず関ヶ原の後の家康になったつもりで、戦略地図を描くことです。江戸に近い地域や交通の要所には譜代大名を充てる。つまり本体とシナジーが高い分野はキャッシュフローよりもシナジーを追求する子会社を作り、子会社社長には、その会社のミッションを明確に示すのです。一方、有力な外様大名には江戸から遠い領地を与え、その石高の中から幕府に年貢を納めさせるのです。つまり、本体とシナジーは薄いものの、キャッシュフローを稼ぐ力のある関連会社には、連結決算でグループキャッシュフローに貢献させるのです。

幕藩体制の骨格が幕府本体と譜代大名と外様大名で構成されたように、連邦グループ経営は本体親会社、シナジー追求子会社、キャッシュフロー追求関連会社で構成されるのです。その全体をつなぐのがグループビジョンと明確な役割・ミッションです。グループとして5年後、10年後にはこうなりたい、その時本体はここまで駒を進める、お前の会社は右から攻めろ、 あるいは後ろを守れという役割を示すのです。それがない子会社経営は指揮官がいない、戦略地図もない烏合の衆で、ばらばらに戦いに挑むようなものです。これでは厳しい戦いに勝てません。

あなたの会社は戦略地図をもとに子会社を作っていますか?


セミナー風景